過バライ金返還請求をしても、請求先である消費者金融やクレジットカード会社によってその対応が異なるため、回収率や解決するまでの期間などに差が出てきます。その中で、大手信販(クレジット)会社である「オリコ」においては、様々なケースがあるため一概に平均回収率・解決期間で返還できるとは限りません。
そこで、オリコの過バライ金返還請求事情について、詳しく解説していきます。
【オリコの過バライ金返還請求の特徴】
オリコは、2006年の貸金業法の改正によって、それまで実施していたグレーゾーン金利が撤廃されたことで、2007年3月期の決算では4579億円の赤字に転じています。債務超過の回避と経営を立て直すため、5年間で営業拠点は半減させ、なおかつ社員を1300人削減するなどの資金調達を実施してきました。現在においても、筆頭株主である「みずほ銀行」との結びつきは強く、資金面における不安は比較的少ないです。ただし、カードローンやオートローンの保証会社となっているケースもあることから、過バライ金返還請求の手続きの際にはその点にも注意を払う必要があります。
①オリコの過バライ金返還姿勢の特徴
オリコの過バライ金返還では、主に2つの大きな特徴があります。
1.過バライ金の返還が非常に遅い
オリコの返還対応は非常に遅く、返還請求で和解をし、過バライ金が入金されるまでの期間は平均で8ヶ月程かかります。他の信販会社の中には、和解をしてから3ヶ月~4ヶ月で過バライ金を回収できるところもあり、いかにオリコの返還請求への対応が遅いことが分かります。
オリコの和解による回収期間が平均8ヶ月というのは、過バライ金返還の専門家が対応した場合であり、専門家に依頼せず個人的に返還交渉を行った場合には、更に回収期間が延びる可能性が高く、また過バライ金の回収率も下がります。
また、依頼人がオリコとの取引中に延滞などをすると、回収期間・回収率に影響するほか、ブラックリストにも影響を与えます。
2.裁判をした場合の方が回収期間が短期間
※返還割合… 発生した過バライ金に対して戻ってくる割合
※回収期間… ご依頼からお金が戻ってくるまでの期間
※過払い利息…過バライ金に年5%の遅延損害金を付した場合
一般的な過バライ金返還では、裁判なしで返還請求交渉をする方が、裁判ありの場合よりも回収できるまでの期間が短期間になります。(事務所にもよるが約1ヶ月~3ヶ月)
しかし、オリコの過バライ金返還請求では、裁判ありの方が裁判なしよりも回収期間が約2ヶ月短くなります。また、裁判ありの方が過バライ金の満額回収も可能となるほか、回収するまでの期間の利息分も回収することが可能となります。
②裁判なしでのオリコ過バライ金返還請求の成果(個人・専門家)
・個人交渉:過バライ金満額の50%~70%程度
・専門家交渉:過バライ金満額の70%~90%程度
個人的に交渉した場合と専門家が交渉した場合では、同じ返還請求でも20%~40%もの差が生じることになります。また、過バライ金請求に実績のない事務所に依頼してしまうと、回収率が下がる可能性があり、より満額に近い過バライ金を回収できない場合があります。
また、ブラックリストに影響を与えるような状態では、個人での交渉は困難になる可能性が高いため、オリコの専門家に依頼しましょう。
②裁判ありでのオリコ過バライ金返還請求の成果(個人・専門家)
・個人交渉:過バライ金利息5%が含まれて、満額の50%~100%程度
・専門家交渉:過バライ金利息5%が含まれて、満額の90%~100%程度
オリコの場合、裁判を起こすことで過バライ金返還への対応が柔軟になる傾向があります。従って、過バライ金回収期間が短期間になる他、回収率においても、裁判なしの場合よりも高くなり満額に近い額の過バライ金回収が見込めます。
ただし、満額に近い回収率となるのは弁護士・司法書士が対応したケースであり、本人裁判で満額に近い過バライ金を回収できるのはごく稀です。
オリコとの過バライ金裁判は、ブラックリストに影響を与えるなどの特別な争点がない限り、2回~3回位で判決が出る傾向にあり短期間で回収が可能となります。
【オリコの過バライ金返還請求から入金までのスケジュール】
オリコに過バライ金返還請求を行い、入金されるまでのスケジュールを、裁判なしと裁判ありで見ていきましょう。
①裁判なしのオリコ過バライ金返還スケジュール
1.司法書士・弁護士に相談・依頼
過バライ金請求をする場合には、オリコの過バライ金が140万を超えるかで司法書士・弁護士を選ぶかが変わってきます。
返還の相談後、その日にオリコへ「受任通知(オリコの過バライ金請求の依頼を受けた旨の通知)」を発送します。同時に「オリコとの取引履歴開示請求」もします。
2.オリコから取引履歴の開示
開示請求から2週間程で、オリコから取引履歴が開示されます。オリコの場合、取引履歴の開示は比較的早いのですが、引き直し計算がされていない状態の履歴を送って
くるため、依頼者側が引き直し計算を行ってから請求書をオリコへ発送しなくてはなりません。2015年の初め頃までは、引き直し計算を行った取引履歴を発送していたオリコですが、現在は引き直し計算がなされていないので注意が必要です。また、オリコの取引履歴は分かり辛いため、引き直し計算もやりにくいのも特徴の一つです。
3.引き直し計算後、オリコへ請求書を発送
引き直し計算においては、無料で使用できる「過バライ金引き直し計算ソフト」があるので、期間を掛けずに計算することができ、取引履歴開示の翌日には、オリコに請求書を発送することができます。
4.オリコと過バライ金の返還交渉
オリコへ過バライ金の請求書を発送してから3週間~1ヶ月程で、オリコと過バライ金の返還交渉を行います。双方の条件に合意することで和解成立となります。ただし、ブラックリストへ影響する事情(取引の分断など)があると、和解に時間が掛かる可能性があります。
和解成立がなされた場合には、依頼人へその旨を報告します。
5.オリコから過バライ金の入金
和解交渉から約7か月で、過バライ金が入金されます。初めは、オリコから事務所へ過バライ金が入金され、事務所の成功報酬分を差し引いた過バライ金が依頼人へと入金されます。事務所から依頼人に入金されるまでの期間は、即日になることが多いです。
オリコの過バライ金返還手続きが全て終わるまでに、早くても8ヶ月程度の期間がかかります。ブラックリストへ影響を与える事情がある場合には、長期になる可能性もあります。
②裁判ありのオリコ過バライ金返還スケジュール
1.司法書士・弁護士に相談・依頼
オリコの過バライ金請求について相談・依頼をします。依頼するのが弁護士であれば問題は無いのですが、司法書士の場合は過バライ金が140万円を超えると裁判を行う権利が無くなるため、依頼を受けることができなくなります。
現在の法律では、140万円以下の過バライ金裁判においては依頼人の代理で裁判(示談交渉を含む)を行うことが可能ですが、140万円を超える場合には司法書士は、代理で過バライ金裁判を行うことができなくなります。従って、その後のオリコ過バライ金裁判については、弁護士に引き継ぐか本人裁判で行うかのどちらかになります。
本人裁判を選んだ場合、裁判に必要な書類に関しては、司法書士は過バライ金の金額に制限なく作成することができるため、そのまま継続して司法書士に依頼することが可能です。
2.オリコへ受任通知を発送
オリコへの過バライ金請求を依頼することになった場合、その日にオリコへ受任通知を発送します。同時に、取引履歴開示請求も行います。これで過バライ金返還請求の手続きが開始となります。
3.オリコから取引履歴開示
取引履歴開示請求をしてから3週間前後で、オリコから取引履歴が開示されます。オリコの場合、2015年以前は個人宛の取引履歴(引き直し計算が未計算のもの)と、専門家宛の取引履歴(引き直し計算済みのもの)と2つの書式が存在していましたが、2015年初旬以降は、引き直し計算が未計算の書式に統一されています。こうしてことから、オリコでは手続き過程を増やすことで、過バライ金返還の期間を延ばしていると推測されます。
4.引き直し計算後、オリコへ過バライ金返還訴訟を提起
引き直し計算を行って正確な額を算出したら、オリコへ返還訴訟を起こしたことを伝えます。
返済中に過バライ金請求をした場合、引き直し計算によって借金が0になれば問題はありませんが、引き直し計算後に残債があると、過バライ金で借金を相殺される可能性がある他、ブラックリストに影響を及ぼす可能性もあるため、できれば完済してから手続きを行いましょう。
5.第1回オリコ過バライ金返還裁判
裁判は全て依頼した弁護士・司法書士事務所が代理で行うため、依頼人が出廷することはありません。ここでオリコと和解が成立すれば、過バライ金が返還されます。ここでブラックリストに影響を充てるような事情が分かると、和解成立が難しくなるため第2回・第3回と続くことになります。返還訴訟においては、長くても第3回までに判決が出る場合がほとんどですが、ブラックリストの状況によっては長期間になる可能性も否定できません。
オリコの場合、裁判になると対応も柔軟になり比較的短期間で解決することが多く、回収率も満額に近い額+過払い利息分の回収も見込めます。
裁判中でも、並行して和解交渉を行っていきます。そこで和解が成立すると、裁判は取り下げられて過バライ金返還手続きが取られます。
6.オリコから過バライ金の入金
裁判または返還交渉で和解が成立し、その日から約4ヶ月でオリコから事務所へ入金されます。その後、成功報酬を差し引いた過バライ金が、依頼人へ入金されます。
裁判における、過バライ金返還請求から入金までの期間は、早くて半年前後となります。
【オリコの過バライ金請求で注意すべきデメリット】
オリコの過バライ金は、他の信販会社とは異なっている点も多いため、注意すべき点がいくつかあります。
1.取引履歴が分かり辛い
オリコの取引履歴は、引き直し計算には必要のないショッピング枠の利用が記載されたものが開示されます。ショッピング枠はSPと記載されており、キャッシング枠のCSとは分けて計算しなくてはなりません。ショッピング枠を利用している場合には、引き直し計算が複雑となるため専門家に依頼することをおすすめします。
2.過バライ金請求により、オリコカードの自動解約となる
手続きが終了すれば、オリコカードの再発行が可能です。カード再発行をする際にも審査があります。
3.ブラックリスト(信用情報)への影響
オリコに限らず、返還請求をする場合には、借金を完済した状態で請求することが前提となります。借金の返済中に過バライ金請求をすると、場合によってはブラックリストに影響を与えることになります。
例えば、返済中に返還請求を行い、引き直し計算をして借金が0になる場合には、ブラックリストへの影響はありません。しかし、引き直し計算後に借金が残る場合には、ブラックリストに記載されることになり、今後の審査に影響を与える可能性があります。従って、オリコに請求を行う場合には、ブラックリストのことを考え返済中の手続きは避けた方が良いです。
4.ショッピング利用では相殺される
オリコカードのショッピング枠を利用中に過バライ金請求をする場合、ショッピング枠の残高と過バライ金が相殺されることになります。
5.返済中に任意整理をした場合のブラックリストへの影響
オリコへの返済が滞ってしまった期間がある状況で過バライ金請求をすると、取引の分断とみなされ、過バライ金の大幅減額につながる可能性があります。また、延滞した期間があるとブラックリストにも影響を与えることになります。
オリコは、過去にある法務事務所の依頼人において、本来はブラックリストに影響のない依頼人であったにもかかわらず、間違って債務整理をされブラックリストへ影響を及ぼしかねない手続きをした経緯が報告されています。そのため、他の信販会社よりも慎重に手続きを行っていく必要があります。
6.オリコのブランドカードも対象となる
オリコで複数のブランドカード(オリコカード・アメニティ・アプティなど)も返還請求に対象となります。
7.取引の分断があると過バライ金が減額対象になる
オリコとの取引中に分断した期間があることで、回収額が大幅に減額される可能性が高くなります。また、延滞したとみなされ、ブラックリストにも影響を与える可能性があります。
オリコと複数取引があった場合、1回目の基本契約と2回目の契約内容が同じであれば一連と取引とみなされ、一連計算で対応可能です。
【オリコ過バライ金請求のまとめ】
オリコは、他の信販会社とは違い、和解交渉よりも裁判の方が早期解決につながりやすく、依頼人にブラックリストへ影響を与えるような事情が無い限り、最短半年で過バライ金回収が見込めます。
ただし、取引履歴が分かり辛かったり、引き直し計算がされていない状態で開示されるため、請求するまでに時間が掛かるなど、返還までの期間を延ばす傾向がみられます。
また、返済中に任意整理などブラックリストに影響を与える事情があると、過バライ金の減額を主張してくる可能性もあるため、信頼できる専門家に依頼し、慎重に手続きを行っていく必要があります。